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とある部長のモンスター社員との攻防記録

とある部長とモンスター社員との攻防記録

はじめに

モンスター社員、問題社員、ハラスメント社員という言葉を聞いたことがあるだろうか。
職場、仕事上での言動、態度に問題がある社員を指す。よく言われる〇〇ハラスメント、XXハラスメントに当てはまる行動・言動がみられ、いじめや嫌がらせに繋がり、他の社員に迷惑をかけるだけで無く、会社に不利益をもたらす。
その為、会社・マネージャーとしては早期に解決しなければならない。
そんなモンスター社員と対峙してしまい、大きな失敗を犯してしまった私の記録をここに記す。
これを読んだ人の役に立つことを願う。

序章:やる気に満ちた社員!?

私は長年所属していたアプリケーション開発部からITサービスマネジメント(運用保守)部へ異動し部長となった。その時に初めて彼、Aさんと出会った。
Aさんは、見た目・性格ともに大人しい雰囲気だった。
100人以上いる部下の一人だったので、Aさんと接する機会は少なかった。
直属の課長からは人事評価時に以下のようなことを聞いていた。
「Aさんが現行業務に課題を感じている」
「リーダーが、その課題を対処しない為、Aさんが孤立奮闘している」
「実質はAさんがリーダー的なことをやらされていて不満をもっている」
「なにもしないリーダーであれば、自分が先頭にたって変えたいと思っている」
これを聞いて、大人しい見た目とは裏腹に仕事に対し熱意をもって対応してくれる社員なんだと思った。

1章:責任者の任命

年度末、戦略から部を編成することになった。
数名の課長が異動となった為、複数の課を統合した。その時に課長の負担を下げる為、係長としてAさんを抜擢した。
彼に任せたのは、上司や課長の進言があったからだ。
「Aさんには、そろそろ係長ぐらいの役職をつけないと不満で会社を辞めてしまう」
「Aさんに辞められると業務が回らない」
 etc...
一抹の不安を残しながら、新しい体制はスタートした。
  • 【私の後悔】
    • 人の上に立つ役職を他人の評価で決めてしまった。
    • 自分の目で見て、話をして、人となりを理解しようとしなかった。

2章:パートナーさんが会社に来ません

それは突如、私に報告された。
「Y社のパートナーさんYさんが、先週から体調不良で休まれています。」
良くない報告だが、100人以上も部下がいれば、そのようなことも起きる。
私は通院の結果とY社営業担当者にコンタクトを取り、状況を確認するように指示した。
その後、Yさんは出社するが、勤怠は安定しなかった。
解決に向けてYさんと会話しているうちに、Yさんは重い口を開いた。
「Aさんと一緒に仕事をするのが辛いです。」
纏めると以下になる。
  • 依頼されたタスクでレビューしてもらうが、指摘だけで指示がない。
  • 答えが出ない、答えがないものに対し、長時間と問答を行う。
  • 朝礼時に他の社員がいる前でご指導が始まると1時間を超える。
  • Aさんの中に答えがある場合、それに完璧に従わないとOKがでない。etc...
Yさんは以前にも、うつ病を患ったことがあった。Y社営業担当者と相談し、職場を変えるということでYさんは去ってしまった。
Y社営業担当者からは過去の病歴もあり、おおごとにしたくないという言葉をもらい、私は謝罪と組織としてカイゼンする旨を伝えた。

後日、Aさんにフィードバックを行った。本人の言い訳は以下だ。
  • Yさんを成長させる為、あえて答えを言わない。
  • 能力が低すぎる。もっと考えるクセをつけてもらいたかった。
  • レビューは丁寧に行っている。
Aさんの主張もわかるが、マネージャーとしての考え方、接し方にカイゼン点があることを話し一度、係長の任を外すこと、そしてマネジメントを学び直し実践できたときに改めて係長を任せたい旨をAさんが傷つかないように伝え、フィードバックを終えた。
私はAさんの真剣な面持ちを見て、リーダーとして変わってくれると信じていた。
  • 【私の後悔】
    • はっきりと問題点(パワーハラスメントにあたること)を言わなかった。Yさんの主張を切り取ってみるとハラスメントにあたるものがある。
    • 例えはレビューというと聞こえはいいが、複数のメンバがいるなかで、1,2時間、一方的に詰め寄るのは、人前で罵倒・叱責するのと変わりない。
    • 問題点に対し、今後どのようにするかを本人と約束しなかった。
    • このフィードバックについて、議事録・録音を残していなかった。
3章:またパートナーさんが会社に来ません

数ヶ月後、また同じようなことが発生する。Aさんの主張も前回と変わらない。
どうやら、自分と同じぐらいのレベルに達していない相手にマウントを取るようだ。逆に自分より優秀なエンジニアに対しては近寄らない、もしくは批判的になる。
面談後、課長と相談し、Aさんには今の担当ラインから外れて新たなプロジェクトで活躍してほしいと話した。
すべては、Aさんを既存メンバから遠ざけ、新天地で頑張ってもらうためだった。
  • 【私の後悔】
    • この時点で社内のコンプライアンス委員/渉外課へエスカレーションするべきだった。すでに部門で手に負える範囲を超えているが、Aさんを守ってしまった。
4章:どんどん、おかしな方向へ

『自分は不当な扱いを受けている!』それは突如、はじまった。
Aさんは今までの担当業務からはずれたこと、そして自分がリーダーとしてのポジション、役職を得られないのは上司からイジメであると言い始めた。
係長を外れたあとも、後輩に対し自分の必要性を訴えていた。時には後輩をつかい、Aさんをリーダーとしたプロジェクト体制を上申してきた。
それらを課長は受け入れなった。なぜなら彼の言動や行動は何一つカイゼンしているように見えなかったからだ。
ついには愚痴を言うだけには収まらなくなった。
『自分はこのプロジェクトはもうやらない』
『不当な扱いを受けている理由を説明しないかぎり、指示は受けない』など、他のメンバの前で言う始末だった。
Aさんの言い分はこうだ。
  • 入社以来、ITサービスマネジメントに従事してきた。一番の知識と経験を持つ自分がプロジェクトから外されるのは不当な扱いだ。
  • 過去に指導が行き過ぎた。ハラスメント行為があったかも知れないが過去のことで今は改善している(※だたし半年もたっていない)。
  • 部長・課長は異動で責任者となっており、ITサービスマネジメントについて無知である。
  • (2,3人、贔屓にしている後輩の名前を出し)これはメンバの総意であると言ってくる。
私は何とか事態を収拾するべく、関係者一人ひとりと面談・ヒアリングし、その結果をAさんにフィードバックした。Aさんの良いところ、強み、問題点、カイゼン点をメンバのコメントと共に、できるだけ客観的に伝えた。
しかし、Aさんには伝わらなかった。
『結局、自分が悪い前提でヒアリングしている。もうアナタたちと話しても意味がない。あとは会社に判断してもらいます。』
これを最後にAさん直接会話するこは無くなった。
  • 【私の後悔】
    • ここまでに約2年の月日が経過している。私の会社は歴史ある会社で、社員を家族として、時には厳しく、時には優しく、育てる文化があった。私はAさんに対して、その精神をもって接してきたつもりだったが、全ては無駄だった。私の声はAさんにひとつも届いていなかった。
5章:その後

Aさんはその後、社内のコンプライアンス委員に私を含める上司にハラスメントを受けていると訴えた。コンプライアンス委員は人事部門に属しており、社外との渉外対応を行うスペシャリスト(警察OBなど)から構成されていた。
コンプライアンス委員は2ケ月ほどの期間を使い、徹底して聞き込みを行った。社員はもちろん、派遣社員、社外関係者など、広範囲に聞き込みは行われた。
その結果、Aさんのハラスメント事案は全て明らかになった。彼は明るみになってないだけで、数年前からハラスメントが常態化しており、それがもとで社員も数人退職していた。
コンプライアンス委員もヒトである。今回の全体像が見えるころには『この人、やばいね』と言ってくれるようになった。

そして結果が出た。
Aさんは、私の部門から去ることになった。
  • 【私の後悔】
    • 上司である私に問題があると疑われるので、ドキドキしながらヒアリング受けた。時には部下を厳しく指導するので、本当にビビった。
    • コロナになってから、社員がモンスター化することが多いそうだ。今回のようなケースが他でも発生していると聞いて安心した。

最終章:学び

私が今回の経験で学んだことは
  1. 日本の法律は労働者を守る前提で作られている
    • 法律を犯さない限り、ハラスメント社員でもクビにすることはできない。そもそも日本でクビはできない。※合法的にクビにできる方法があれば教えてほしい。
  2. コンプライアンスを違反した時点で然るべき処置を行う
    • 迷わずコンプライアンス委員や渉外課などに相談するべき!部下のミスは上司が被るのは仕事上の話で、コンプライアンスは別である。
  3. 記録を残すということ
    • これが一番の後悔である。ここまで問題になると思っていなかったので、最初の方は面談の記録(録音や議事録)を残していなかった。
  4. 面談するときは、何が悪くて、何をカイゼンするかを記録する
    • あとから見直せるように、悪かったこと、カイゼンするべきことを文字にするが大切。
  5. どう頑張っても、分かり合えない人はいる
    • 自己中心的な考えをする人は、それを悪いと思っていない。自己中心的とも思っていない。だから、どれだけ歩みよっても交わることはない。
    • これ系の問題は、性善説から性悪説へ考えを切り換える。
自分の部下は、守りたいし、立派に育ってほしい。
しかし、行き過ぎた過保護は、他のメンバに迷惑をかける。
コンプライアンス違反に対して、勇気をもって立ち向かわなければ何も救えないし守れないと今回、気づかされました。

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